あいつは行っちまった、社員旅行の向こう側に

腹筋しろよ

ある朝、あいつは期待と不安が入り交じる140文字の塊をつぶやいていた。 気づいたらあいつは、社員旅行の向こう側に消えていた。

あいつが「会社」や「旅行」にどういった感情を抱いていたのか、俺は知らない。 それぞれに良い感情を抱いていたとしても、交差したそれは全く違うのだ。

ただなんとなくわかるのは、新しい出来ごとに適応しようとするあいつなりの不器用な姿勢だけだ。 俺は誠実であると思う。 そのひたむきさには心打たれる。

旅先であいつは一体何を経験するのだろう。 PCのない非日常 、上手い飯、寝る前の語り合い。 俺の頭に思い浮かんだ経験はどれもが素晴らしく思える。 あいつにとってはどうだろう。

身近に感じていた人が、遠くに行ってしまったと感じる瞬間が、人生にはある。 何かが変わってしまって、昨日までとは違うのだ。目の前にいるあいつはもうあいつじゃない。

まるで季節のようだ。一度過ぎ去った夏は二度と取り戻せない。

あいつは帰ってくるだろうか、帰ってこないかもしれない。

あいつからしたら、俺が止まってしまっただけかもしれない。 だとしたらここにはもういれない、また再会できるかはわからない。

俺もいかないと、それだけはわかっている。