Japan Accessibility Conference vol.1に参加してきた

腹筋しろよ

タイトルの通りJapan Accessibility Conference vol.1に参加してきました。 当日は会場に人は一杯で、どこからこんなに人が湧いてきたの(?)とアクセシビリティへの関心の高まりに感動しました。

各セッションを効いた感想をさっくり書いていきます。 なお当日のセッションはめちゃんこありがたいことに、こちらからアーカイブ配信を見ることができます。

基調講演「UX as Science」 #

元Yahoo! Korea CEOで、韓国インターネット専門家協会 Kim Jinsooさんの発表です。

UXとは何か?という定義の話、「我々はものをどう見ているか?」という科学的な話をした上で、Yahoo! Koreaのトップページのデザインをどう改善していったかをお話いただきました。 トップページの改善を行うにあたり、数パターンの改善案を用意して実際にリリース→検証のサイクルを回したそうですが、その結果に科学的な裏付けを交えて分析を解説していただきました。

正直前半は(私の問題)で理解が難しい内容が続いたのですが、後半になるにつれピースがはまってなるほどなぁと思もえる内容でした。

面白かったのが、アイトラッキングによるデータに基づいた調査から、単に目立つデザインでは人間は見ない、コンテキストにそったデザインにすることで初めて人は発見するという一つの結論です。

語られた内容はWebだけではなく専門領域またいだアプローチ(特に人に対してフォーカスすること)で、当然ですが、Webの世界から出ていかないと、そこにたどり着くことは難しいと感じました。

視野を広げていろんなことに興味を向けて行きたいと感じるセッションでした。

アクセシビリティのインクルーシブデザイン #

株式会社 SNC Lab 代表取締役 張善英さんの発表です。

韓国はアクセシビリティについて法整備が進んでおり、すべての法人はアクセシビリティ対応を義務付けられクリアできない場合は罰則があるそうです。 またアクセシビリティについてチェックをする監査機関が存在し、チェックを受けたWebはマークを設置してアクセシビリティ対応を表明するのだそうです。 監査自体も一回やれば終わりではなく、年一回の更新が必要だそうで制度化が進んでいる印象でした。

また最近でもある巨大ショッピング企業へ利用側からの訴訟があり、(勝ち負けの問題ではない)使う側からの「権利の主張」も行われるようになっているとのことでした。

また、後半は韓国の2つのオンラインバンクの比較事例が紹介され、誰にとっても使いやすい、極力フローを減らしたオンラインバンクが伸びているという話をしていただきました。 ただ、これにはユーザビリティは良くてもアクセシビリティが良いわけではないという強烈なオチが待っていました。

話の最後にはインクルーシブデザインについての内容があり、違っていることが普通であるという素晴らしいメッセージもありましたが、個人的には「Web以外」のインクルーシブデザインで紹介された、誰にでも使えるキッチン用具が心に刺さりました。

一つ例に取り上げると目盛りが斜めについており、持ち上げなくても内容量がわかる計量カップ、「あぁデザインの力ってすごいなぁ、おもしれぇなぁ」と素直に思えるものです。そしてこのようなデザインは実際にビジネスとして成立しています。 (文字だけでは伝わらない...ユニーバーサルデザインでググっていただけるといろいろでてきます。) 「色んな人が使えるデザイン=ワクワクするデザイン」だなと初心にかえるような気持ちになりました。Webもこうでありたいですね。

アクセシビリティ・ガイドラインの歩き方(初心者編) #

スライド

もんどさんと大田さんの発表です。

もんどさんにはWCAGもくもく会で疑問や質問にコメントいただいており、密かにお世話になっていました。この目でお見かけするのは初めてで、ミーハー(?)な心がざわつきました。太田さんはCSS Niteでもお話をお聞きしましたが、自己紹介は鉄板ネタになっているのですね。

本セッションでは読むのに心が折れることで定評のあるアクセシビリティガイドラインを読むコツを伝授していただき、実際に会場のみんなで読んでいき「わかったー」を目指す内容でした。

ガイドラインは技術文章の特有なフレーム、構造があり、それを押さえた読み込んでいけば理解しやすくなりそうです。 ドキュメント自体もWCAG2.0仕様の他に① WCAG2.0 解説書② WCAG2.0 達成方法集、**③ How to meet WCAG2.0(クイックリファンレス)**があり、役割が違います。毎回仕様書に突っ込んで撃沈してる方はそれぞれの役割を押さえて合わせて読み込んでいくとなんとかなるんでは。

ここまで書いててスライドやセッションのアーカイブを見たほうがはるかにわかるんじゃないかと思うので筆を止めます。セッションの力を信じろ、いいから信じろ。

僕は会場でわっかたーに慣れた気がしました。

「読み慣れていないと難しい」はどうあがいてもつきまとう問題で、残念ながら仕事でガイドラインに触れる機会が少ない方はWCAGもくもく会(主催グループはこちら)に参加しつつモチベーションを高めてチャレンジしていくのが良いんじゃないでしょうか。 マサカリもなく、素朴な質問にも答えていただけるイベントです。私も参加してますしオンライン参加もOKみたいです。

アクセシビリティ検証ツールとしてのNVDA入門 #

スライド / サンプルコード

NVDA日本語チーム 西本卓也さんによる発表です。

スクリーンリーダーに対する知見がほとんどなかったので「なるほど」しか感想がでてこなかったセッションです。

NVDAはWindowsの無料スクリーンリーダーでオープンソースで開発が続けられています。 MacであればスクリーンリーダーはVoice Overが馴染みが深いと思います。実際に会場ではMacを使っている人の方が多かった気がします。

NVDAの特徴として

  • 無料であり、利用者も開発者も利用しやすい
  • やらなくていいことはやらない、OSのみに依存する

があげられるそうです。

後者は特に機能を盛り込むことが必ずしも良いことだとは限らない、 スクリーンリーダーがあれもこれも対応すればするほどOSやアプリのアップデートに弱くなり NVDAは本来のOSやアプリの機能を最大限に活かす方針であるとのことです。(例えば拡大機能はブラウザのものを使うなど)

後半は実際にNVDAの使い方を説明およびデモしていただき、わかりやすい説明で挙動が理解できました。 以前Voice Overを触ったときに何がどうなってるのかわからず挫折した経験があり、とても助かるデモでした。

スライドの後半にはMacでNVDAを体験してみるための、仮想Windows環境の構築方法やNVDAの導入が詳しく説明されています。 実際に触ってみたくなったら参考にするのが良いんじゃないでしょうか。僕ははやくWindowsの実機ほしいなと思ってます。ああクソ空からSurface book降ってこいよ。

日本最大級のトラフィックを操る企業を動かす障害当事者の声。 〜障害当事者と企業デザイナーによるトークセッション〜 #

ヤフー株式会社 中野信さん、AccSell 中根雅文さん、株式会社インフォアクシア 植木真さんによる発表です。

アクセシビリティを大企業の中で広めていくには?実際に中根さんに評価いただきながら改善した時のお話をしていただきました。 途中に中根さんのスクリーンリーダーを使った実演も挟まれました。

実演ではスクリーンリーダーの読み上げ速度、かなり早くて何を言ってるか僕はちょっとわかりませんでした。 またかなり効率を重視したページの把握の仕方をされており、見出しだけをガンガン舐めて回遊していったり、検索を使いこなしたりと実際の使用方法を知ることができる、目からウロコな実演でした。

Web自体が(というか情報の構造が?)ちゃんとした構造を持っていること、altが適切に設定されていることなど「ちゃんとWebを作る」が実践されていなければ上記のような使い方には不適合です。 中根さんも必要のない情報はガンガン飛ばしていったので、意味のある見出しづけや構造の配置がされていなければ意味がないです。 (これはスクリーンリーダーを利用するとき限定だけでなく、ページを目で見て情報探すときも同様だと思います。)

またアクセシビリティに対応する側の人間同士が集まるだけでなく、実際に当事者の声を聴くことが大事ということをお話されていて**、**要望だすフォームを設置しておくだけでは解決になりづらいとのことです。

実際に改善は行われるのか?担当者はどういうバックグラウンドの人でどういったコミュニケーションをとれば適切なのか?を考えていくと利用者側が要望を上げていくこと自体がとてもハードルの高いことで、そもそもWebを作る我々が近づいて行くことを考えなければならないのではと思いました。

まとめ #

参加して気持ちが高まったり、自分の知らなさについて考えさせられるイベントでした。大事なのはイベントに参加したことで明日から何か変えるために動きだすことで、今は記事を書きながら考えています。

また当日の内容がFRESH!でライブ配信されましたが、時間をおかずにアーカイブ公開もされ、とても助かりました。 聴講できなかったセッションもぼちぼち見ているところです。

登壇者と運営の方々、ありがとうございました。